《レポート》南部鉄瓶&安比塗 工房見学会

冬の寒さも和らぎ少しずつ暖かくなってきた3月上旬。
岩手銀行赤レンガ館にて盛岡市を中心としたエリアの若手工芸産業事業者が一堂に会する商談会が開催されました。またその翌日には実際に作家さんの作業現場へ行く工房見学会を実施、工芸品を取り扱うバイヤーの方などが参加しました。
今回は、工房見学会の様子をダイジェストでご紹介します。

バスは盛岡駅西口を出発し、盛岡市川目地区にある南部鉄瓶工房「紅蓮堂」さんの工房へ。
説明してくれた作家の葛巻さんの語り口は柔らかく、自然と話しやすい雰囲気に。
参加者の方々は、製造過程の話から実際に店頭で南部鉄瓶を販売する際のお客様への説明や対応のアドバイスなど、次々と質問を重ねていました。

普段は完成形しか見ることができない南部鉄瓶。この日は細部にわたるまでじっくりと紹介いただきました。

説明後は、特別に作業工程を見せていただきます。
すると、先ほどまでの和やかな雰囲気は一変。
研ぎ澄まされた集中力で職人の技が繰り出され、皆さんも固唾をのんで見守ります。
柔らかなフォルムと凛とした雰囲気が同居する紅蓮堂さんの商品。その秘密がわかった瞬間でした。

続いては八幡平市安代方面へ。そば処としても知られるこの地区で、美味しいお蕎麦を食べてひと休み。 

午後は安代地区にある「安比塗漆器工房」へ。
この地域には漆芸家を養成する安比漆工業技術センターがあり、今も漆器文化が受け継がれています。工房の入り口には採取されたあとの漆の木も。

漆は温度や湿度で粘土や光沢が変わる、デリケートなものだそう。
こちらでは工房内で精製し、天候なども考慮しながら塗りや乾燥の作業をしているとの事。

 

安比塗は、木地に漆を塗っては研ぐ工程を繰り返して強度を高めています。
この手間と時間をかけた作業のおかげで漆器の強度が上がり、長く使い続けるうちに器の味わいが増してきます。

作業工程を見学後は、工房内にある展示商品の説明。
こちらでは塗師(ぬし)でもあるスタッフの方が直接販売もしています。

旅の最後は、盛岡に戻り、盛岡駅ビル「フェザン」へ。
安比漆工業技術センターを修了された個人作家の方などによる販売イベント「エキチカの漆市」の見学です。

この日は、漆文化や漆器の利用拡大についての活動を行う盛岡一高の学生さんが販売員としてお手伝い。総合的学習活動の一環で岩手県内の漆文化について学んでおり、漆器の知識はプロ顔負け!
オリジナルのPOPもお客様の目を引いていました。

 

岩手には南部鉄器、漆器、染物など古くから受け継がれてきた工芸品・手仕事文化があります。
今回のツアーでは、伝統的な技術と使いやすいデザインを日々試行錯誤を重ねながら生み出そうとする作家の方々のエネルギーを感じるとともに、それを伝えようとする若い世代の皆さんの姿にふれることができました。


このツアーは岩手県盛岡広域振興局主催で、manordaいわて株式会社様が実施運営する商談会「MORIOKA CRAFTERS FAIR&TOUR 2021」で開催されました。